私たちを助けて来た愛おしくもあり、怖くもある動物とは?

 十数年前のちょうど今頃の季節だったと思います。奥多摩町の森林館裏山にあるトチの巨木見学に出かけた時のことです。急なスギ林の林を登り続けて一時間くらいした所で、尾根筋に近い見晴らしの良い丘の様な所に出ました。その時、目の前の光景にビックリしました。緩斜面のあちこちにいっぱい穴があいているのです。

 「あれって何の穴ですか」とお聞きしましたところ、「あれはこの辺に住んでいるキツネの巣穴だよ。化かされない様に気をつけな」と脅されました。

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 そう言われて気づいたのですが、キツネとよくであう地域には、キツネにまつわる様々な信仰や言い伝えが残っています。私がよく行く岩手県二戸市では人を助けたりする愛に満ちあふれたキツネにまつわる民話がいっぱいのこっていて、子どもたちに今も伝えられています。
 また京都の伏見稲荷に代表される様に、「お稲荷さん」となって人々の望みを叶えてくれる信仰の対象にもなっています。

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 また一方で「キツネつき」にあった!などと言われ、憑依されることもある妖怪的なイメージもあり、恐れられています。
世界中でもこれ程色んな顔を持っている動物は他にいないのではないでしょうか。今日は、この摩訶不思議な「キツネ」について書いてみたいと思います。

 世界には大きく分けて北極地域に生息するホッキョクギツネ、中南米に生息するハイイロギツネ、南アフリカに生息するケープギツネ等、14種類のキツネが分布していますが、その中でも世界に一番広く分布しているのが、カナダ、アメリカ、ヨーロッパ、中東、ロシア全域からチベット、中国、そして日本と広く分布するアカギツネの仲間であり、日本の通称ホンドキツネと呼んでいるものもこの仲間です。

 キツネは規則を持った集団生活をするサルの様な社会性動物ではないのですが、雌を中心に家族単位で生活しながら、お互い近い所に縄張りをもって生活をしています。
 私なりに言えば、「それぞれの家族は自分たちの家族を大切にしながら他からの干渉をさけ独立した生活を維持しながら、互いに隣の家を意識し合い、緩やかな村の様な社会を形成している生き物達」と行ったイメージです。
 子どもは生まれてから2週間目頃から巣から外出し、餌の捕り方などを親から習い始め、4ヶ月後には巣立ちするそうです。
キツネにとって一番好む環境は林地、草原、灌木林の混合地域でノネズミ、ノウサギ等の生息する地域と重なります。
 キツネはこれらの動物を食しますが、秋には果実等の植物も採餌するそうです。そう言えば前にもブログで書きましたが、親ギツネが子ギツネの前で、くるりと飛び上がり、前方宙返りを繰り返す「こんこんちきキツネの舞」は子ギツネに野ネズミの捕り方を教えている姿なんです。


 ある研究者は、「キツネが一年間の生活に必要な食ベものの量の総量は、おおよそ312kgであり、食べ物の種類に換算すると、25gのネズミなら5,320頭、2kgのノウサギなら51頭、5gの昆虫なら4,000匹、植物質なら75kg必要となる。」と推論しています。
 この数値は農耕文化社会にあって、最大の害獣である野ネズミの駆除にキツネが多大な役割を果たして来たかを示しているといえます。このことがキツネが農耕の神として信仰され、神秘的能力をもつとされ、豊穣や富のシンボルとされて来たでことを示すものではないかと思われます。農耕社会にあって欠かすことの出来ない動物であり、私たちの生活を支え、その力に敬意の念を持って接し、愛されて来た動物であることは間違いなさそうです。

 しかし一方で、家畜のニワトリやトウモロコシを食い荒らし、農家にとっては死活問題のもなりかねない厄介な相手にも豹変することがあります。
 このことが、愛されながらも怖がられ、神様にもなりながら怖い悪霊にもなると言う複雑な関係を私たちと持って来た動物でもあるのです。ある意味では、本当に古来より私たちと苦楽を共にして来た動物と言って良いかも知れませんね。

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 でも悲しい現実がキツネ達を襲っています。

 近年のネズミを殺す野鼠剤という農薬の使用、畑地のコンクリート化やハウス化、雑林地の植林地化は、どんどんノギツネたちの生息域を狭めているのです。私の住んでいる檜原村でも最近見る機会がグンと減っています。
 もし山でキツネに合うことが会ったら「ありがとう」と心の中で声をかけてあげてください。
 そしてそのキツネとであうことの出来る環境を守る様に皆さんも協力してください。宜しくお願いします。

2017年6月14日 10:00 | | コメントを読む (0) | コメントを書く