砂丘まで創ってしまう植物の力

 皆さん、暑い日が続いていますがどの様におすごしですか。
 先日新潟県の佐渡島の隣に位置する「粟島」に行って来ました。この島は私が高校生から大学生にかけて植物の調査で通った懐かしい島です。偶然ですが、この島の村長さんに呼ばれて講演に行って来たのです。

 じつは、この島は、昭和39年の新潟地震で海岸が隆起し、私はこの隆起した場所にどんな植物が順番に生えてくるのか調べていたのです。当時、隆起した岩場では海の中にいた貝や海藻が腐ったりして、匂いのすごかったことや、不思議なことに夜になるとその隆起した岩場からカエルの声の大合唱がうるさいくらいに聞こえてきたことが記憶に残っています。
 今回、島に着くなり早速その場所に行ってみました。残念ながらその場所はもう無くコンクリートで固められて広場になっていました。でも「他の隆起した場所では砂浜海岸になっている所が多くありますよ」と村長さんの奥様に教えていただき、どんな様子か見にいきました。今日はその砂浜でみた植物のお話です。

 その砂浜は岩場に囲まれた場所にありました。砂を触ってみると細かく砕けた貝殻が混じったさらさらした砂で、手からすぐにこぼれ落ちます。でも細かく砕けた貝殻の粒を多く含んでいますから、きっと冬になるとは北風が強く吹きつける場所に違いありません。
 この砂浜には、海辺に近い砂浜から陸地に向かってピンクの花をつけたハマヒルガオ、茶色の実をつけたコウボウムギ、可愛いスイトピーのような紫色の花をつり下げているハマエンドウ、ひときわ海岸で目立つ黄色の花を幾つもつけたハマニガナなどがありました。何とも言えないのどかさを感じます。
 でもこの一見するとのどかに見える砂浜は、じつは植物達の生育環境としては厳しいものなのです。風で飛んで来た砂で埋まったり、海からの塩分たっぷりの水にさらされて枯れそうになったり、すぐに乾燥してしまう砂地で強い日照りにあって枯れてしまう危機と、一時も安心できない環境なのです。でも、この砂浜をあえて生き延びていく知恵を持った植物がいるのです。こんな普通の植物なら嫌うような環境でいき伸びている植物は他の植物には見られない独特の知恵を持っているのです。いくつかその知恵を資料を元に紹介したいと思います。

●砂浜の女王ハマヒルガオ。
 ハマヒルガオの茎は砂の上をはって四方八方に伸び砂浜の上にへばりつく様に生えていて、コテコテして厚い葉で光沢があり、丸まった2~5cmほどの葉は、群がって砂の動きを止めている様にさえ見えます。資料によりますと「葉が厚く光沢があるのはクチクラという透明で強い膜状の構造が発達しているためで、水分の蒸散を抑え、乾燥や塩害を防ぐ役割を持っています」とありましたから、葉が厚いのは、日照りが強く乾燥しやすい砂地から身を守る手段だったのですね。また掘ってみて分かったのですが、横に伸びる根のような茎と地下に真っすぐ伸びている根のような茎があったのです。」なぜだろうと調べてみましたら、ハマヒルガオの茎には2種類あるという研究結果がありました。
 「1つは根を出すための太く短い茎、もう1つは砂浜を這って葉を茂らせ長く伸びる茎がある」と言うのです。一方の太い茎で地下に根を伸ばして砂地の深い所にたまっている水分を確保すしながら命を確保して、もう一方の茎で横に伸びて、他の植物の入り込めないヒルガオだけの仲間で出来たエリアを広げて葉を一面に茂らし、砂に埋まってしまわない様にグループで生きていこう!と言うことらしいのです。すごい知恵ですね。

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●砂丘を創るコウボウムギ
 コウボウムギはヒルガオよりもっとすごい生き方をしています。葉は細く、固くコアゴアしていて水分の蒸発を防ぐようにできています。それに加えてすごいのは砂地に埋まっている茎の部分です。海岸のコウボウムギを手で掘り起こしてみました。奥が深くて大変です。なかなか根元までたどり着きません。たどり着いた所を観てみますと、そこから地下茎が分かれて広がっていたのです。ヒルガオのような地表近くではなく、地下部にできた茎の根元から地下茎を伸長し、ずーっと砂地の深い所で四方八方に広がっていたのです。ですからコウボウムギが群れて生えている所では、飛んできた砂を受け止め、簡単異砂は移動できません。このことからある研究者は「コウボウブギの生えている所では砂地の塊りが出来やすく、長い時間をかけて砂丘を形成していく働きがあると考えられます。」と言っています。
 植物の進化は過酷な環境であればある程、その環境に適応使用と、生き方に工夫をして進化を進めていくのです。すごいですね。困難苦難は生き延びるエネルギーなのですね。

kouboumugi.png

●追伸です
 粟島は星がきれいで、天然記念物のオオミズナギドリの繁殖地があったり、海にはウミウシがゆらゆらと泳いでいたり、不思議いっぱいの島です。東京から僅か5時間くらいで行けます。村長さんは「自然いっぱい、美味しさいっぱい、不思議いっぱいの『毎日が心いっぱい』の島です。是非遊びにおいで下さい」と言われました。お子様をつれて是非夏休みに一度行ってみませんか。

2016年6月15日 10:00 | | コメントを読む (1) | コメントを書く