自然が知らせる気象情報、危機情報?

 皆さん、秋の終わりに近づいたとは言うものの、まだまだ暑い日が続いていますね。いかがお過ごしすか。8月に西表島で行われた五穀豊穣を祝う節祭(しち)に学生と参加したときのことです。その暑さは例年以上で耐えられないくらいのものでした。この暑さで海水温が30度以上になり、どんどん珊瑚が死んでいくという白化現象がおこっているというニュースが流れていました。この白化現象発生の原因は、は毎年やって来て海水をかき混ぜてくれる台風が例年になく極端に少ないことから来ているものです。

 「暑いですね。この秋になれば大きな台風が来ますかね?」と、粗内集落の仙人と目されている石垣金星さんに訪ねた時のことです。金星さんは、ちょっと深刻な顔をして長期予報をしました。「真板さん、台風は来ないかもしれませんよ。私たちの島では、昔からグンバイヒルガオが海辺に向かって伸びる年は台風が来ないと言われています。砂浜を見ると海辺に向かっていますから、今年は大変よ。」確かに今年の台風の発生とその進路をテレビで見ていると金星さんの予言通り、西表島をあえて避けて北上している様にさえ見えるのです。

 西表島は亜熱帯地域で年中山は緑で覆われています。一見すると本土に見られるような四季折々の変化はありません。でも年2回の田植えをちゃんと行い、来るべき季節には伝統行事のお祭りを実施して神様に感謝の祈りを捧げ、一年という時を滞りなく過ごして来たのです。

 その昔、今のような時計もなければ季節を知らせるカレンダーなどというものはありませんでした。私たちが当たり前に「今は何月何日?」と思ったとき、何のためらいもなく、カレンダーを見て今がいつかが分かり、そして、この時期だから何をすべきかを知ることが出来ます。でもカレンダーという「時」を知る手段がない時、どのようにして人々は「時」を知って来たのでしょうか。その答えの一つを金星さんが教えてくれたことがあります。それは「セイシカ」と呼ばれる植物の存在です。この植物は西表島と隣の石垣島にしか生息していない珍しい植物で、ツツジ科ツツジ属、高さ7~8メートルにもなり3月~4月に山中で薄紫色の花を咲かせます。この植物の花が咲き始めると地元では「セイシカの花が咲いたら田植えの時期だよ!」と、田植え作業開始時期を決めていたのです。また、「今日は晴れる日かね?雨の日かね?」と、「今日か明日のいつ頃作業をすべきか?」を知りたい時は、天を見上げてカンムリワシの飛ぶ様子から「カンムリワシがたかく飛ぶ時は晴れるよ!低く飛ぶ時は雨が降るよ!」と言われことを思い出しながら、作業開始の情報を得ていたのです。西表島に関わらず、同じような言い伝えは私たちの身の回りにも探せば数多く存在します。

 例えば、「蜂が低い所に巣を造る年は台風が多く来る」。「ユキムシが飛ぶ時は気温が下がって雪が降る」などです。
 実は私たちはこのような自然の変化を敏感に感じ取り準備を始める生き物情報を農耕作業や生活を安全に過ごす情報として日付の入っていない出来事を月の満ち欠けと潮の満ち引きを時間軸にして表で示して利用して来ました。その名前を「フェノロジー・カレンダー」と呼んでいます。別名は「季節暦」とも呼ばれ、1年間の気候や山や川、潮汐や星座、また動植物などの季節ごとの変化と、それに応じて推移する農業や漁業等の生産活動や、収穫の感謝祭などを一目で分かる様にカレンダーとして表わしたものです。

 岩波生物学辞典(第4版 1996) によれば、フェノロジー(phenpology)とは、「生物季節(学)、花暦(学)。季節的におこる自然界の動植物が示す諸現象の時間的変化およびその気候あるいは気象との関連を研究する学問。例えば、植物の発芽、開芽(芽ぶき)、開花、紅葉、落葉などの時期の調査から、それぞれの地方の気候の比較ができる(後略)」となっている。季節の移ろいとともに変化する自然現象をとらえる学問であると記述しています。
 今年の7月にフィージーに行ったとき、国連の事務所に勤めるフィージアンの友人が、
 「ミスター真板!私はいま真板から教わったフェノロジーカレンダーづくりをもとに、集落に昔から伝わる動植物や自然現象が伝える大災害事前情報の言い伝えカレンダー作りをしています。お金のない集落では自分を守る上でとても大切な宝情報なんです」
と、教えてくれました。

 季節の移ろいを感じにくくなった都会の中で、突然起る異常気象からの災害。今私たちは自分で自分を守る知恵を自然から学び直す必要があるのではないでしょうか。それゆえ、これらの身近な自然資源、生活・文化資源についての情報をフェノロジーカレンダーとして整理し、各季節と関連させながら把握・整理して一目で今を自然からのメッセージで知る知恵づくりが必要とされる気がしています。最後に示したフェノロジーカレンダーは岩手県二戸市のものです。お米が冷害栽培しにくいため雑穀栽培で生き抜いて来た東北地方の知恵の詰まったカレンダー「二戸、食のたからこよみ」です。ごらん下さい。

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2016年9月14日 17:46 | | コメントを読む (0) | コメントを書く