知っていますか? 秋の七草

先日、京都大覚寺大沢の池では観月祭が行われ、池面に映る中秋の名月を楽しみました。
秋と言えば「秋の七草」。
今日は知っているようで知らいない「秋の七草」のお話です。 

秋の七草は奈良時代、山上憶良が万葉集で詠った草花をさしています。
いずれも派手ではなく、秋の到来を知らせてくれる草花が
とりあげられているのが特徴です。
いくつかの資料からの引用をしながら説明していきましょう。

1、萩の花 … ハギ
ハギはマメ科の植物草です。
語源は多くの茎が地面から多数生えてくる姿を捉えて、
「生え芽(はえぎ)」からついたと言われています。
『万葉集』にはこの花を詠んだ歌が多数詠まれていて人気があったことが分かります。
当時の貴族が、一つ一つがすぐ散ってしまう可憐なハギの花姿に、
ものの哀れさを感じる美的対象として捉えていたことが伺われます。
ハギは古くから生活の中に利用され、例えば小豆島では箒として利用したり、
籠編みにも利用されていました。

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2、尾花(おばな)… ススキの穂
尾花とはイネ科のススキの穂を指しています。
この植物も古代から日常生活に利用され、各地に残る刈場の地名は、かつて屋根葺き用や炭俵用の場所として維持管理されていたことを指しています。

ススキはまた宗教的儀式にもしばしば使われて、収穫物を悪霊や魔物や災いから守る力を持った植物とされていたのです。
じつは中秋のお月見の習慣はもともとこのような意味合いから発達したものであり、それゆえススキを飾ると言われています。

3、葛花(くずばな)… クズ
葛花はマメ科のクズの花を指しています。昔から食用、薬用、織物用などとして利用されてきました。
例えば江戸時代の本である『大和本草』の中では、「人を救うことの出来る五穀に匹敵するものである」と書かれているほどで、飢饉のときの飢餓食とされてきたところもあります。
また綿の発達する以前はこのクズの繊維が衣服の素材として
とても重要であった時期もあり、
人々にとても重宝なものとして大切にされていたことが分かります。

4、瞿麦(なでしこ)の花 … ナデシコ(撫子)
中国では古代から薬草として利用されていています。
山上憶良がこの植物を選んだ理由の一つに、この時代すでに鑑賞の対象と
されていたことが考えられます。
紫式部も『源氏物語』の背景にしばしばナデシコを登場させています。
ちなみに、ナデシコと総称される植物は数種類がありますが、万葉集を始めとする
古典にとりあげられているナデシコはカワラナデシコと考えられています。

5、女郎花(おみなえし)… オミナエシ
オミナエシは日当たりの良い山地の草原に生息します。
中国ではすでに漢の時代から薬草として知られ、乾燥させた根を産後の痛み止めなどに
用いていたと記されています。
実際に植えてみると分かるのですが、葉が枯れ始めるころになると花の姿からは
想像できないような異臭を放ちます。
このことから漢名の敗醤草(ハイショウソウ)とも呼ばれています。

このオミナエシのオミナは女性を意味していますが、
エシはメシ(飯)が変化したものと言われ、オミナエシの蕾が黄色く小さな粒で
アワ粒に似ているところから、米飯の別名である男飯に対して女飯の意味で
名付けられたと言われています。

6、藤袴 … フジバカマ
フジバカマは藤蔓(ふじづる)の繊維で織った袴を着けた姫が、
野辺に迷って行き倒れたその跡に生えた草だ、という純日本的な伝説があります。

原産地の中国では、日本の縄文時代晩期にあたる周の時代から、
痛み止めの薬として利用されていました。
また香りは桜餅の葉の香りに似たクマリンという物質を持ち、
衣服のにおい付けや髪洗いのシャンプーにも利用されていたという
特別の意味を持つ植物としてあつかわれていました。
遣唐使としての留学経験もある山上憶良がこの草を秋の七草の一つに選んだのも、
フジバカマのもつこうした文化的価値を考慮したためと考えられます。

7、朝貌(あさがお)
実は、七草の内6種はその名を挙げられるのですが、
憶良が最後に挙げた“朝貌”は正体が不明なのです。
万葉集の中には“あさがお”を詠んだ歌があるものの、今日アサガオと呼んでいる植物は
熱帯アジア原産で、日本へは平安時代に入り、8世紀の万葉集の時代には
まだ渡来していなかったと考えられています。
当時の“朝貌”は今言うところのキキョウではないかとの解釈が主流です。

ところで、遠い昔に詠われたこの七草は時代とともに変化し、江戸時代中期では
「オトコヘシ、リンダウ、ノギク、シオン、カルカヤ、キキョウ、ワレモコウ」が
七草として詠われています。
私たちも自然の少なくなったこの時代の中で「新しい現代七草」を探して
自然をいとおしむ心を取り戻してみるというのはいかがでしょうか。

2008年9月17日 09:43 | | コメントを読む (0) | コメントを書く


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