「桜花鳥」が日本の空を舞う日は?

皆さん、やっと暖かくなりサクラの蕾も膨らんできました。
もうすぐ開花ですね。
サクラといえば、奈良時代に「桜花鳥」と書く奇麗な鳥が
日本の空を舞っていましたが、何の鳥かお分かりでしょうか。

それは現代では「朱鷺」と書き絶滅に瀕している、
国の天然記念物の鳥「トキ」の事です。

先日、新潟県佐渡市の佐渡トキ保護センターで野外に放つための訓練をしていた
トキ9羽が、ゲージの中に侵入したテンに襲われて死んでしまったという
悲しいニュースが流れました。
私も以前この仕事に少し関わっていた事があり佐渡まで行っていましたので
とても残念でなりません。
この絶滅に瀕しているトキの保護増殖に、現地で日々悪戦苦闘しておられる方々の
悲しみと悔しさが伝わってきます。

Toki01.jpg

トキは、コウノトリ目トキ科の鳥。
学名は日本を象徴するようにNipponia nippon(ニッポニア・ニッポン)です。
19世紀迄は東アジアに広く分布しており珍しくない鳥で、体長は約76cm、翼開長は約130 cm。
朱色の皮膚が露出している顔、下方に湾曲したくちばしが特徴です。
18世紀中頃の江戸時代、農地を増やすために実施された開墾による農地面積の増加に従って、ドジョウ等の餌場の環境が増えるに従い、急激に日本全国に分布を広げていったようです。

当時、トキは田畑を踏み荒らす害鳥扱いをされ、あまりにトキが多く困っていたため、
お上にトキ駆除の申請を出した地域もあったほどだったとの記録が残っています。

実は、享保19年(1734)、幕府が領内津々浦々に至るすべての産物を
調べて報告するために医官の丹羽正伯に命じて、
組織的に約7万町村以上の村々を対象に全国の動植物の調査がなされています。
これは日本最初の全国動植物調査と言えます。
この「享保・元文諸国産物帳」は全動植物の名称を一覧化した帳面と、
絵図帳の2種類からなっていました。
この1735年の情報を元に農学史の研究者であった安田健氏は
国別のトキの全国分布図を作成し、日本ではじめて
江戸時代のトキの分布を明らかにしたのです。
これによれば、トキは北海道から九州までほぼ全国に生息していた事が分かっています。
かつて、私もこのお仕事の手伝いをさせていただいたことがあります。
長崎県対馬でこの資料を発見し、記録の整理や、
江戸時代と今の動植物名の違い等を研究させていただきました。

しかしこのように全国至る所に生息していたトキも、
肉が身体に良いとされて捕食されたり、奇麗な羽根を取る目的で乱獲されたり、
農地での農薬の使用等により、1925年か1926年ごろには
絶滅したとされるほどにその姿を消してしまいました。

Toki02.jpg

幸いかな、昭和に入って佐渡島で目撃例が報告され、1932年5月には加茂村(→両津市、現佐渡市)の和木集落で、翌昭和8年(1933年)には新穂村(現佐渡市)の新穂山で営巣が確認されたことから、1934年に天然記念物に指定されたのです。
当時はまだ佐渡島全域に生息しており、生息数は100羽前後と推定されました。
しかしその後、さらなる農薬の使用、農地の減少などでその数が激減し、2003年10月10日朝、最後の日本産トキ(名前はキン)の死亡が確認され、日本産のトキは絶滅しました。

現在は生物学的にはまったく同一種である中国産のトキを借りて人工繁殖を行い、
2009年には、ようやく162羽まで回復して来たのです。
そして2008年から2009年にかけて日本の佐渡島において
人工的に繁殖された30羽が放鳥され空を飛び回るまでに至っています。
このような放鳥のためのリハビリ訓練中のトキ9羽がテンに食べられてしまったのです。

農地という私たちの身近なところで生息していたトキは
私たちの生活環境の変化で絶滅し、トキを愛する多くの人たちの知恵と努力で、
再度復活させて日本の空に舞わせようとしています。
是非皆さんも日本を代表するトキの復活に関心を持ってください。
トキが舞う事は私たち人間も安心して暮らせる環境が戻って来た事を意味するからです。

2010年3月17日 10:02 | | コメントを読む (0) | コメントを書く


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