山の妖精「エビネ」に出会った!

皆さん、関東より西のほうでは早や、桜の女王といわれるソメイヨシノも散り、
葉桜となっていますが、東京ではこれに代わってボタンサクラが満開です。
一方、東北地方ではソメイヨシノがちょうど今頃満開となり、
青森などではこれから開花となります。
皆さんのところではどんな桜が咲いていますか。
毎年、五月の連休の頃になると、東北の武家屋敷の街並みで有名な
角館町(かくのだてまち)ではシダレザクラが咲き誇り、
多数の観光客を楽しませますが、見に行かれたことはありますか。
一度だけ行ったことがありますが、街並みを飾るシダレザクラの景観は
世界一といっていいくらい凄いですよ。

今日はこの目立ちやすい春の花形スターであるサクラとは違って、
ひっそりと山野を飾る「山の妖精」とよばれる植物のお話です。
その名前をエビネランといいます。
このランの仲間は東南アジアから中国、日本、ミクロネシア、東アフリカ、
オーストラリアまで約200種が分布し、日本では20種類の野生種が自生しています。
日本では花の形が弥勒菩薩に似ていることから
「弥勒花(みろくばな)」と呼ぶ地域があるそうです。

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私が最初にこの植物に出会ったのは、高校1年の生物クラブの調査で新潟県岩船郡の沖合に位置する粟島(あわしま)に行った時のことです。海を見下ろす雑木林の根元にひっそりと、しかし美しくやや茶色がかった花をいっぱいつけて、群れを成して咲いていました。
このエビネはエビネ属の中でジエビネまたはヤブエビネと呼ばれています。初めて見るジエビネの花に「こんなにきれいな花があるんだ!」と感激して、以来この植物のとりこになりいろんなエビネを買ってきては、自分の家の庭で栽培しています。

二番目にエビネの仲間で印象的だったのは、ツシマヤマネコの調査で訪れた長崎県対馬での杉林の中でした。
うす暗い杉林の斜面を登っていた時のことです。暗さの中に黄色の花が目に留まりました。あの粟島で出会ったエビネとは違っていました。花はジエビネより一回り大柄です。気付けば杉林のあちこちに点々と咲いているんです。見とれてしまいました。
このエビネはキエビネと呼ばれるもので、九州地方に多く分布しています。最近では栽培品も出回っているようで、私も目黒不動の市で売っていたものを買ってきて植えていますが、毎年きれいに咲いています。うっとりします。

三番目は少し開花期が違います。
出会った場所はあの世界自然遺産地域で有名な屋久島に行った6月初旬のことです。屋久島を世界遺産に登録する作業と並行して世界遺産センターを建設することとなり調査に出かけた時のことです。
常緑広葉樹林に入ったとき、ひときわ目立つ純白の花を花茎の上部から鶴が飛び立つ姿の様にいっぱいに咲かせている植物がありました。この花の白さと姿は今まで見たことがないものでした。茎の高さは60cmくらいです。
この植物の名前はツルランといいます。
日本のエビネ属のなかでは南方系で、日本では九州南部、沖縄に分布しており、
名前は花の開いた姿が、ツルが飛ぶ姿に似ているところからきているそうです。
今では数が減ってしまい、絶滅危惧種に指定されています。残念です。

このエビネ属のエビネという名前は、根にあたる根茎は太くて節が多く、
横に這いながら次々とつながっていき、このつながった根茎の様子が
エビの体の様子に似ているところから付いたそうです。
資料によれば日本での栽培の歴史も古く、
エビネの名前が最初に文献に現れるのは1491年だそうです。
「大沢久守の日記『山科家礼記』に花材としてエビネを生けたことが記されている。
 江戸時代になるとエビネは園芸植物として人気を博すようになり、
 江戸中期には多くの品種が作られた」と記されています。
エビネにあてられた漢字名も多いそうで、
「海老根、他倫草、化倫草、龍草など多くの当て字がありますが、
 何れもエビネと読む」んだそうです。
昔の人もこの山の妖精に魅了されて付き合ってきたんですね。

みなさんも、いろんな春の山野を歩いてみてください。
いつか山の妖精「エビネ」に出会えるかもしれませんよ。
でも美しいからといって持ち帰らないでくださいね。
今エビネの仲間は乱獲や盗掘にあって絶滅に瀕しています。
私たちの心をいやしてくれるこの珍しい植物をみんなで守ってあげましょう。
よろしくお願いします。

2011年4月27日 09:53 | | コメントを読む (0) | コメントを書く


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