小さな菌に与えられた大きな役割とは

皆さん、お元気ですか。
今年の紅葉は奇麗だと思って待っていたのですが、なかなか夜半の気温が下がらず、
今ひとつ美しさに欠けています。
紅葉せずに茶色になって葉を落とし始めている木々もあったりしています。
でも悪いニュースだけではありません。
私たちの桧原村では「今年はキノコが豊作です!」というニュースが、
いっぱい収穫された写真とともに入ってきました。
そんな写真の中に世にも恐ろしい珍しい写真がありましたので
挿絵にしてご紹介したいと思います。

106Haekabikin.jpg

一つ目の挿絵は、しっかりと木に掴まったままプードルのような状態で、身体に白いショールを巻いているようにして死んでいるバッタ君です。
私はこれを「プードルバッタ」と勝手に名付けましたが、どうしたんでしょうか?
実はこの季節は、バッタ君等の昆虫にとって恐ろしい季節でもあるんです。
晩夏から初秋にかけて昆虫やハエ等の身体に菌の胞子がつくと、その内部に入って寄生して増殖し、殺してしまう恐ろしいカビがいるのです。
この菌の名前はハエカビ菌といい、世界で6科22属、200種近い種を含んでいます。


寄生されると体内で菌糸が繁殖するため、段々と昆虫の身体から水分を奪って、
身体を硬化させていきます。
そして動く力を失った昆虫は、生きているように
何かに止まったままの姿で死んでしまうのです。
知らないうちに死んでいるなんて怖いですね。

106Kamemusitake.jpg

もう一つの挿絵は、カメムシの身体から伸びている小さなキノコです。
この挿絵はキノコ研究家で有名な蜂須賀公之氏からお借りしたものを参考にしています。
このキノコの名前をカメムシタケと言います。
秋、蜂須賀先生主催のキノコの観察会の時、林内で見つけました。
菌がカメムシの仲間の成虫に寄生して、カメムシの胸部等から1~数本のストローを伸ばします。
長さ5~10cmのストローの先端がマッチ棒の先を細長くしたようなキノコ状のものがついています。
この挿絵のように昆虫から生えるキノコの仲間を総称して「冬虫夏草(とうちゅうかそう)」と呼んでいます。

冬虫夏草の名前の由来は、一般的に「冬眠する昆虫に寄生して体内に侵入し、
冬の間に栄養分を吸収しながら菌糸を培って、暖かくなると発芽して
地上に姿を見せるキノコ類」の生態的な特色からこう呼ぶようになったとされています。

身体が寒さで動きにくくなる冬にそっと昆虫の体内に侵入し、
少しずつ菌を繁殖させて、今頃、身体の栄養を全て奪い取って
キノコとして地上に出てくるなんて、とても恐ろしいですね。
おちおち冬眠も出来ませんね。
冬虫夏草は文献によれば「世界的に少なくとも390種、このうち日本国内で約250種。
このうち日本特産種が約150種、外国との共通種約50種、
学名の決まっていないもの約50種が確認されている」と書いてありました。
でもこんな怖いキノコですが、中国では冬虫夏草を乾燥させ
薬膳料理の食材として珍重されており、今でも結構高い値段で売っているんですよ。

ハエカビ菌も冬虫夏草の仲間のキノコ類も一般的に寄生菌とも呼ばれていますが、
こんな怖い生き物は、いない方が良いとお思いではないですか。
ちょっと待って下さい。
実はこの菌が相手にするのは、ともすると自然界では数が増えすぎて
大変な事になってしまう特定の昆虫が多く、
これらの昆虫の異常発生を抑制する役割を持っているのだそうです。
この菌はこの地球上で自然界のバランスを取るという
重要な役割を神様から担わされている小さな生き物なんですね。
地球上で使命を持っていない生き物なんて一つもいないんですよ。
みんな役割を持って地球を支えているんです。すごいでしょ!
でも人間が地球上で数が増えて行った時、これと似た生き物が出て来て
コントロールされたら大変ですね(こわーい)。

2011年11月23日 07:24 | | コメントを読む (1) | コメントを書く


コメント

先生の知識、知恵が素晴らしくて、
いつも感動です。
自然・植物・生物に関心を持って、調べていますが、先生の説明かとってもやさしく判りやすくて感心します。
御身大切にして、説明続けて下さい。
有難うです。
合掌。

Posted by: toshimi sugano | 2011年11月27日 09:11


コメントを投稿する

ブログの管理者が公開を承認するまでコメントが反映されない場合がありますので、ご了承ください。 また、投稿されたコメントはフジテレビKIDSが企画・制作する映像物や出版物、ウェブサイト、広告宣伝などで利用させていただく場合がありますのであらかじめご了承 ください。