満月の夜とオカガニの知恵

皆さん、今年の中秋の名月は満月になりましたね。
私は観月の池として有名でもある大覚寺大沢池で観賞したのですが、東の夜空に姿を見せたお月様が、とても大きかったのが印象的でした。
また、お月様の世界へ誘うように月の道「ルナウエイ」が池面に映し出され、それはそれは神秘的で奇麗でしたよ。
今日はこのお月様と深い関係にあるカニさんのお話です。

「イリオモテヤマネコ」で有名な沖縄県の西表島に遊びに行った時の事です。
「島興し運動家」であり「沖縄の八重山地域の民俗研究家」でも知られている石垣金星さんと夏の夜、古酒と食事をしていたときの事です。
しばし三線の演奏に聞き入りほろ酔い気分になった頃、金星さんに
「真板さん、お月様も上がりました。さて面白いものを見に行きましょうか」
と誘いを受けました。
西表島は不思議一杯の島です。
きっと何かあるな?と金星さんの後をついて出かけた場所は近くの砂浜海岸でした。
その日は月明かりで字が読める程明るく、先日大沢池で観たようなまん丸なお月様でした。

砂浜を取り巻く堤防の上に座ってお月様を眺めていると、何かおぞましい音がしてきます。
ガサガサ、ズーズー、ガサガサ、ズーズー、と足下から聞こえてくるのです。
「え!これって何?」
と思って音のする陸側の堤防の下を覗き込むと、何と、数千匹はいるか?と思うくらいのオカガニ達が群れを作って走っているのです。
砂浜に向かって途切れている堤防の出口を目指しています。

その後をついてきましたら、堤防の途切れている出口から怒濤のごとく流れ出て、砂浜から海辺に向かってまっしぐらです。
押すな押すなのへし合いです。辺り一面カニだらけ。
そして海辺にたどり着いたオカガニ達は、体をユサユサとゆすって次々と卵を産み始めたのです(放卵と言います)。

金星さんに聞きましたら、毎年、夏の潮の満ち引きの一番大きい大潮の満月の晩に繰り広げられる生き物の一大イベントとの事。
山奥に棲むこのオカガニ達は子孫を残す為に命がけで山を越え、野を越え、危険な道路を横断し、海岸までやってくるとの事でした。
堤防等が無かった頃は、まっすぐ海岸までたどり着けたのですが、堤防が出来てからはすぐに海辺まで行けず、出口を探して走り回るのだそうです。

「人間の安全の為に作った堤防が、オカガニの命の営みを邪魔してるって悲しいですね。真板さん」と言われました。

ところで、どうやってこのオカガニ達は大潮の満月の放卵の時期を悟って海辺までやって来るのでしょうか。
ある人が、オカガニを実験室に入れて、いろいろな実験をして解明を試みましたが分からなかったそうです。
あきらめかけた時、研究者が箱にあけてあった穴から間違ってライトを照らしたらしいのですが、その時突然カニ達がザザザザと動いたそうです。
もしかして?と思って、お月様をライトに見立ててだんだんと光を三日月型から満月型に形を大きくして照らしてみたそうです。
すると案の定、満月の形でカニ達は一斉に動く反応をしたそうです。

そうなんです。
カニ達は大潮の満月を山奥の岩陰から覗いては、月の形を確認して絶好のタイミングを見計らっているようだという事が分かったのです。
なんとも想像できなかったまさかの結論でした。
頑張って毎日チラッと夜空を覗いて岩陰にまた潜って行動するカニ達の姿を想像すると、その姿に思わず笑ってしまいます。
小さな生き物だと言ってばかにしてはいけませんね。
どんな生き物でも生きる為のもの凄い知恵の持ち主なんですね。
金星さんが
「西表島は、人も、カニも、生き物もみんな一緒に生きていますよ」
と言って笑っていました。
皆さんも一度西表島に行ってみて下さいね。



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ここでお知らせです。
私事ですが今度、飛鳥新社から「草魚バスターズモもじゃもじゃ先生、京都大覚寺大沢池を再生する」を出版しました。
生き物とつき合うとはどういう事か?という14年の悪戦苦闘の物語を、分かりやすくミステリー風に説き起こしています。
ぜひお読み下さい。

2013年9月25日 10:11 | | コメントを書く