昔話『トトメキトラコ』に託した思いとは

皆さんこんにちは。
日本中で寒い日が続いていますが、いかがお過ごしですか。

先日ですが、北海道大学の友人から、「出勤途中、キャンパスに住みついているキタキツネに久々に出会う。元気でよかった。立派な冬毛になってました。お互い意識しつつしばらく並走。キタキツネと出勤というのも不思議な気分です」と写真入りのメールをいただきました。
そういえば私も先日、奥南部に位置する岩手県二戸市に行って来たのですが、ちょうど前日に大雪で辺り一面は銀世界でした。
集落から山の方に向かっていると、雪の上に点、点、とキツネの足跡を発見しました。
二戸はキツネが多く棲息する地域なのですが、今日はこのキツネにまつわるお話です。

皆さんは、柳田邦男という民俗学者をご存知でしょうか?
岩手県には彼が歴史民俗学研究の拠点とした「遠野地区」があります。
彼は著書の中で、この遠野よりもっと面白い日本人の原点になる様な地域があると語っていたのですが、その後亡くなられ調査はされなかった地域がこの二戸なのです。
では、この地域に残る愛情あふれる素敵なキツネのお話しをしたいと思います。

昔、昔、この村から畑に行くのに、大きな丘を越えて行かねばならなかった。
この丘の上には昔から『トトメキトラコ』と呼ばれる奇麗な牝狐が住んでいた。
ある日の事、おじいさんは、鍬(くわ)と鋤(すき)を持って丘を越えて畑に行った。
畑仕事も終わり日も暮れたので、「よっこらしょ!」と鍬と鋤を担いで丘を登りだしたときの事である。
丘の上にはそれはそれは奇麗な娘さんがこちらを見て、おいで!おいで!をしていた。
あまりの奇麗さにおじいさんは我を忘れて、一生懸命丘を駆け上がり娘に会おうと頑張った。
ところが丘に駆け上がってみると、そこには娘の姿はなかった。
おじいさんは『トトメキトラコ』にまた一杯食わされたかと悔しがった。
息を切らしながら家に着くと、おばあさんが、「お帰りなさい。そんなに息を切らしてどうしたかね?」と聞くので「『トトメキトラコ』に会って近づいたが逃げられてしまった」と答えると、おばあさんは「おじいさん、それは大変だったね。これからは化かされんように気をつけなければいけませんよ」とニコニコ笑って一杯のお茶を出して、息を切っているおじいさんを慰労した。

というお話です。
私はこのお話しを聞いた時、『トトメキトラコ』ってどんなキツネだったんですかね、と尋ねましたら、「先生、この話は、だんだん年をとって体力がなくなってきたおじいさんは、体力が低下して丘を上がるにも息を切るようになって来たんです。この事をおばあさんに悟られたくないために、『トトメキトラコ』に会おうと丘を駆け上って息を切らしたと嘘をついているんです。でも『トトメキトラコ』のせいにして、得意げに話しているおじいさんの嘘を見抜いているおばあさんは、話しに騙されたふりをして、おじいさんをいたわっている、という話なんです」と教えてくれました。

私はなにか胸が熱くなるものを感じました。
東北の厳しい山の中で、一緒にいたわり合いながら生きる事の大切さを『トトメキトラコ』の物語にして親から子へ、子から孫へと語り継いでいるんですね。
この二戸では、各集落に「物語にしたてあげられているキツネ」がいっぱいいて、今も綿々と語り継がれています。
是非皆さんも一度、この素敵なお話を聞きに奥南部の二戸市を一度訪ねてみてはいかがでしょうか。

2014年2月12日 09:22 | | コメントを読む (0) | コメントを書く


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