悪者にされた「サルさんからの訴え」

皆さん今年の山は実りが少ないようです。
動物たちも冬の準備に大わらわだと思います。
山から動物たちが里の柿の実を食べにやってきています。

秋と言えば以前「柿とサル」のお話を書きましたが、今日はその続編ともいうべき、あのよく知られた昔話「猿蟹合戦」で悪者にされた「サルさんからの訴え」を書きたいと思います。

ある日のことです。
カニさんと山から降りてきたサルさんとが道でばったりと出会いました。
サルさんはお腹が減っていました。
ふと見るとカニさんが美味しそうなおにぎりを持っていたのです。
サルさんは「そのおにぎりを下さいな! 代わりに山から持ってきたこの柿の種をあげます。数年たてばいっぱい美味しい実がなります」と言いました。
カニさんとサルさんの交渉は成立。
カニさんは「桃栗三年柿八年。早く実がなれ柿の種」と毎日一生懸命育てたのです。

やがて立派な実をつけ始めた時のことです。
大きな柿の実がたわわとついています。
でもカニさんは木に登れません。
偶然そこにあのサルさんがやって来たのです。
「サルさん、サルさん久しぶり。あの柿の実を採って下さいませんか」とせがみます。
サルさんは木の上をチラと見ながら少しためらいましたが、カニさんの願いを何とかかなえようと柿の木に登って行ったのです。

「サルさん、早く、もいで投げてください」
サルさんはなぜか躊躇しています。
でもサルさんは意を決して、びっくりしたことを始めたのです。
なんと木の上でとった柿の実をかじり始めて自分だけ食べ始めたのです。

「何してんの、サルさん。自分だけ食べないで私に投げてくださいな」とカニさんがサルさんの行いに不信感いっぱいで大声で怒鳴り始めました。
サルさんは、てっぺんで何かを言っていますがカニさんには聞こえません。
するとサルさんは下にいるカニさんに当たらないように、あっちにポイ! こっちにポイ! とかじっては投げ、かじっては投げし始めたのです。

180Sarukani.jpg

「サルさん何をしているんですか」と柿をキャッチしようと右往左往します。
その時です。
サルさんが投げた柿がカニさんに当たってしまったのです。
哀れ!カニさんはその柿に当たって子どもを産んで死んでしまったのです。
やがてその子どもたちが、母親のかたき討ちのために、栗さん、蜂さん、牛糞さん、臼さんに助っ人を頼んで連携攻撃します。
サルさんは徹底的に痛めつけられて「ごめんなさい!」をするという物語です。

でもカニさんには、とんでもない誤解があったのです。
じつは柿の木になっていた大きな柿の実はまだ青かったのです。
でもカニさんはそのことがわかりません。
なぜならカニさんという節足動物は色の認識ができないのです。
世界中の動物の中で、色の認識ができるのは鳥類とサルなどの霊長類だけなんです。
カニさんは「美味しそうに実っている」と勝手に思っているのですが、サルさんは、「まだ青いので食べごろではない!」とわかっていたのです。
でもカニさんに恩義を感じていたので仕方なしに柿を採りに登って行ったのです。

もう一つ、カニさんには大きな勘違いがありました。
サルさんからもらった柿の種が甘柿だとかってに思い込んでいたことです。
以前のブログでも書きましたが、山に生えている自然の柿はみんな渋柿なんです。
完全に熟さないととっても食べられたものではありません。
そこでサルさんは何時も仲間とやっている、山で渋柿を食べる秘伝の方法を実行したのです。

すなわち、「一口かじって唾液をつけ、地面に投げておくことで数日後に発酵して甘柿にする」得意技でカニさんに食べさせてあげようと、木の上からかじっては投げ、したのです。
きっと「カニさん、柿の実を投げますから、危険なので離れていてくださいね」と言ったに違いありません。
そして当たらないようにわざとカニさんの居る場所をはずして投げていたのです。
そうとは知らないカニさんは、サルさんは独り占めをしようとしている思い、自分から柿を取りに行って、不慮の事故で亡くなってしまったのです。

それなのに子カニ達は仲間に応援を求めて、義理堅く親切なサルさんへの復讐を実行するなんてとんでもないことです。
そもそもこの事件はカニさんとサルさんの食習慣という日常文化の違いを、カニさんが理解しなかったことから始まっているような気がします。
また一方的に事の真相を確かめもせずに「かわいそう!」と加担していった助太刀グループも大問題です。

ふと気が付けば私たちの身の回りにも同じように、SNS等のネットワーク社会では多々ありそうな話です。
大事なのは自分の手で触って、会って、自分の目で見て、直接話すというアナログ検証こそ大事なのではないでしょうか。
今日は、真板風「猿蟹合戦」の新解釈物語でした。

2014年11月 5日 10:46 | | コメントを読む (1) | コメントを書く


コメント

う~ん、な~るほどそうでしたか。心優しい‟猿蟹合戦”物語。高学年用ですね。いや大人でもいいかな。とても滋味深く面白いです。いつも楽しみに致しております。

Posted by: まっつん | 2014年11月 6日 17:56


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