花咲爺さんの得意技!

 皆さん、今年も強烈な暑い夏の到来です。
 梅雨空の地域もあれば豪雨で大災害に見舞われた地域もあり、日本の気候は本当におかしくなっている気がします。


 かなり前の事ですが、地域の名人探しと言う事で、徳島県美郷村(現在は吉野川市美郷地区)に行った事があります。
 この美郷村は全国でもとても珍しい、村全部がゲンジボタルの生息地として天然記念物地域に指定されているのです。
 6月のシーズンには、両手を広げると手の上にてんこもりになるくらいホタルが集まったと聞きました。

 そんな村の奥に一人のお爺さんが住んでおられたのです。

 「真板先生、この村には『名人の宝』ともいえるすごい人がいるのですが、会いに行きませんか」
 「誰ですか?そのすごい人って」
 「花咲じいさんと呼んでいます。鉢に植えて育てるのに、5年から10年以上かかるツバキやボケ、サクラの花をわずか1年位で咲かせてしまうのです」

 と教えてくださいました。


 早速、その神業を持ったご老人に会いに出かけました。
 その家に着いてびっくりしたのですが、玄関前の広い庭には、大きくて見事な花付きの木が植えられている鉢が、所狭しと置いてあるのです。

 そこはまるで桃源郷のようです。

 噂のとおり、小さな鉢に大きな花のついた植木・・・。

 どうして、こんなふうに時間を短縮して、一気に花を咲かせる事ができるのか、不思議でなりません。
 家の中から現れたのは80歳位の優しそうな顔をしたご老人でした。
 そしてその花を咲かせる秘密の技を教えてくださいました。

 その秘密の技の名前を「寄接(よせつぎ)」と言います。

 ご紹介したいと思います。
 「寄接」とは江戸時代から伝わる技で、小さい苗を早く大きくする為に行う方法です。

 1)まず、奇麗に毎年花をつける大きくて、元気な木を見つけます。これを通称「砧木(だいぎ)」と呼んでいます。

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 2)次に、鉢に植わっている根が丈夫でしっかりした長い木の植木を探します。通称この鉢に植わっているものを接木(せつぎ)と呼びます。

 3)砧木の枝で、奇麗な花の咲いている長めの元気のよい枝を見つけます。

 4)選んだ砧木の枝の花の裂いている場所から30cmくらい離れた箇所の枝の表面を薄くナイフで削ぎ取ります。

 5)次に、選んでおいた接木の長い木の真ん中辺りを同様に削ぎ取って傷を付けます。

 6)砧木の削ぎ取って傷を付けた箇所と、接木の傷をつけた部分を奇麗にくっつけて、その部分をミズコケでまいて、ナイロンで包みしっかりとひもで固定します。

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 7)数ヶ月すると、接合部分の砧木と接木が一緒になります。これを活着したと言います。

 8)活着した頃合いを見計らって、接合した部分から、砧木は下の部分を、接木は上の部分を奇麗に切り捨てます。

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 9)ついに一本の鉢に植わった、翌年には大きな花の咲く「接ぎ木の植木」が出来上がります。

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 不思議ですね。

 接合部分より上の部分の成長している砧木の花の咲いている性質が残って、鉢の接ぎ木の枝に、翌年から花がすぐ咲くのです。
 そしてもともと鉢に植わっていた接木の根から栄養が送られていきます。

 凄いですね。

 私が花咲爺さんの家で見た時は、接木となる植木が入った鉢は、ツバキの砧木をとる枝に上からぶら下げていました。
 なにげなく、お爺さんに「どうしてこんな秘技を覚えたのですか?」と質問したら、

 「50歳の定年近くになって、農業試験場に勤めていた時に覚えた技を使って始めました。
 定年後、一人になると寂しいので、花を家の周りに年中咲かせていれば、若い綺麗な子がいつも訪ねて来てくれて楽しくなると思ったからだよ。」
 とにっこり笑って話してくださいました。

 名人の考える事は奥が深い!
 老後にみなさんも試してみてはいかがですか。

2017年7月26日 10:00 | | コメントを読む (0) | コメントを書く


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